Portraits from Memory
私はこれまで、多くの巨匠たちの絵画に魅了されてきました。
その作品のすべてを、正確に覚えているわけではありません。
顔の輪郭、光の当たり方、色彩、筆の動き。あるものは鮮明に残り、あるものは曖昧になり、いつの間にか失われていきます。
それでも、忘れたはずの絵が、ふとした瞬間に心の中に現れることがあります。
このシリーズでは、かつて見た巨匠たちの作品を、記憶だけを頼りに描いています。
記憶は、過去をそのまま保存しているわけではありません。
思い出すたびに形を変え、異なるものと結びつき、時には、もともと存在しなかったものさえ生み出します。
描き始めると、確かに覚えていたはずの顔が崩れ、知らない表情が現れる。失われた形を探して絵の具を重ねるうちに、記憶の中にはなかった色や光が生まれてきます。
私は、その変化を大切にしています。
過去の作品を再現するのではなく、記憶の中で変容したイメージを、今の自分の目と手によって描くこと。
そこに現れるのは、かつて見た絵画でも、その作者が描いた人物でもありません。
記憶の中にしか存在しなかった、あるいは、そこにさえ存在していなかった誰かです。
曖昧な記憶から生まれたその姿が、絵の具によって形を持ち、現実の世界に存在し始める。
私はその不思議さに魅了されています。